ご飯の上に海苔、イカ、そしてたっぷりのタルタル。
これだけ聞けば大牟田ではピンと来る人が多いのが「イカタル弁当」。
ちょっと背徳感がありながらも、なぜかまた食べたくなる。そんな大牟田のソウルフードです。
その「イカタル」を福岡市でも食べられるようにしたのが、おべんとうタル助。
現在は大牟田だけでなく、福岡市・天神にも店舗を構えています。
でも今回話を聞いてみると、単に「福岡でも商売を広げたい」という理由で出店したわけではありませんでした。
店主が目指しているのは、
「イカタルを豚骨ラーメンくらい全国に広めること」
そしてその先にある、「イカタルをきっかけに、大牟田という街を知ってもらうこと」なのだとか。
なぜそこまでイカタルに思い入れがあるのか。
なぜ大牟田から福岡へ挑戦したのか。
実際に天神で営業してみて感じたことは何なのか。
今回は、おべんとうタル助の店主さんにじっくり話を聞いてみました。
富山さん
おべんとうタル助 / 店主
大牟田のソウルフード「イカタル」を提供する、おべんとうタル助を運営。コロナ禍をきっかけにイカタル弁当の販売を開始し、その後店舗化。現在は福岡市・天神にも出店し、大牟田の味を福岡、そして全国へ広げることを目指している。


哲っちゃん
プリメーラWEB工房 / 代表取締役
JIMOHACK福岡の編集長。福岡で生まれ、福岡で育った純度100%福岡人が地域の魅力を発信中。本業ではWEB集客やホームページ制作をしている。
哲っちゃん今日はよろしくお願いします!



よろしくお願いします!
「タルタルと愛情がたっぷり」のお店





まず、タル助ってどんなお店ですか?



一言でいうなら、「タルタルと愛情がたっぷりのお店」ですね(笑)
そして、大牟田のソウルフードである「イカタル」をメインに提供しています。



タルタルだけじゃなくて、愛情までたっぷりなんですね(笑)
そもそも福岡市の人だと「イカタルって何?」という方もいると思います。大牟田ではどんな存在なんですか?



大牟田では、イカタルがソウルフードとして昔から親しまれていますね。特に30代、40代以上の男性や年配の方だと、知っている方も多いと思います。



僕にとっても、イカタルは子どもの頃から食べてきた味です。前に食べたい食べ物ベスト3に入るくらい好きです(笑)



そこまでですか(笑)
単純に「売れそうだからイカタルを扱っている」というわけじゃなくて、店主さん自身が本当に好きな食べ物なんですね。
タル助のイカタルは「ご飯と食べる」ためのタルタル


見た目のインパクトから、どうしても「タルタルの量」に目がいきがちなイカタル。
でも、タル助では味のバランスにもかなりこだわっているそうです。



タル助のイカタルには、どんなこだわりがありますか?



一番はやっぱりタルタルですね。イカタルはご飯と一緒に食べるものなので、ご飯に合うタルタルになるように作っています。



特に卵もたくさん使っていて、いっぱい食べても罪悪感がないというか、できるだけ体にダメージが少ないタルタルを目指して作っていますね。



タルタルって濃厚で重たいイメージもありますもんね。



そうですね。
だから味付けも和風にして、比較的さっぱり食べられるようにしています。海苔やご飯もきちんと選んでいるんですよ。



初めてイカタルを食べる人には、どう食べてほしいですか?





まずは、「イカとタルと海苔のマリアージュ」
を味わってほしいですね(笑)



混ぜながら食べてもいいですし、一気に食べてもいい。イカとタルタルだけじゃなくて、ご飯と海苔まで一緒になることで、全部が完成するんですよ。
僕の感覚では、8倍くらい美味しくなる(笑)昆布とか漬物と一緒に食べても、また味が変わって面白いですよ。



8倍(笑)
そこまで言われると、全部一緒に口に入れたくなりますね。
タル助が生まれたきっかけは「コロナ禍」
今ではイカタルのお店として知られるタル助ですが、最初から弁当店を始めようとしていたわけではありません。
きっかけは、世界中の飲食店が大きな影響を受けたコロナ禍でした。



そもそも、どうしてタル助を始めることになったんですか?



当時は、二次会以降に利用してもらうバーなどを経営していたんです。でもコロナになって、営業そのものができなくなりました。何かテイクアウトできるものを作らないといけない。



そこで、「自分が一番よく食べているイカタルなら、お客さんにも出せるんじゃないか」と思ったのが始まりです。



最初から店舗を構えたんですか?



いや、最初はビルの下にテントを張って売っていました(笑)それを常連のお客さんたちが買ってくれて、「美味しい」と言ってくれるようになって。
口コミで少しずつ広がっていったので、「じゃあちゃんとお店にしよう」となりました。





かなり手作り感のあるスタートですね(笑)
タルタルは「前の日まで」改良していた
商品の中でも、一番苦労したのがやはりタルタルだったそう。



商品開発で大変だったことは何ですか?



タルタルの配合ですね。マヨネーズ、卵、調味料。それぞれの量を何度も変えました。営業前日までずっと改良していましたね(笑)



ギリギリまで(笑)





あとは、実際に売り始めたら製造が想像以上に大変でした。イカタルってご飯を結構使うんですよ。10個作るだけで1升。20個なら2升必要になります。
最初は注文が入っても、作るのが追いつかないこともありました。



売れないところから始まったんじゃなくて、逆に「作れない」が最初の課題だったんですね。
なぜ大牟田を飛び出して福岡へ?
大牟田で少しずつ広がっていったタル助。
それでも店主さんは、大牟田だけに留まる道を選びませんでした。
今回の取材で、個人的に一番聞いてみたかった部分です。



大牟田で続ける選択肢もあったと思います。どうして福岡市に出ようと思ったんですか?



僕は、大牟田って少し寂しい街だと思っているんです。「これが大牟田です」と言えるものが、もっとあっていいと思っています。
最近はイカタルがB級グルメとして少しずつ知られるようになってきていますよね。



だったらイカタルをもっとたくさんの人に食べてもらえれば、「イカタルって大牟田なんだ」と知ってもらえる。
そこから、大牟田という街そのものを知ってもらえるんじゃないかと思っています。



つまり、「タル助を大きくしたい」だけじゃないんですね。



そうですね。理想を言えば、イカタルを豚骨ラーメンくらい全国に広めたい。
例えば全国で豚骨ラーメンを食べた人が、「久留米発祥なんだ」と知って、久留米に行ってみたくなることがありますよね。
イカタルでも、そういう流れを作れたらと思っています。



イカタルを売ることが、結果的に大牟田のPRにもなる。それはかなり面白いですね。
天神への出店は「ご縁」とワクワクから



福岡市でも色々なエリアがありますが、なぜ天神だったんですか?



これは本当にご縁ですね。
大牟田市発案の「大牟田マーク」に関するお土産の企画に関わらせてもらう機会があって、そこでつながった事業者さんから今の場所を紹介していただきました。



最初から「絶対に天神!」と決めていたわけじゃないんですね。



全然です(笑)
本当に人とのつながりですね。
普通なら、知らない土地への出店となれば不安が先にきそうなもの。
ところが店主さんは、むしろ逆だったそうです。



福岡へ出す時、不安はなかったですか?



なかったですね。むしろ楽しみの方が大きかったです。
何も知らない街で色々やってみるのが楽しい。そういうサバイバルみたいな感じは好きですね(笑)



昔から挑戦するタイプだったんですか?



いや、全然です(笑)
でも以前、経営者向けの研修でずっと、「ワクワクすることをやらないといけない」と言われ続けて。ちょっと洗脳されました(笑)



いい洗脳ですね(笑)
福岡への出店も、その「ワクワク」の延長だったんですね。
福岡で初めて感じた「お客さんが来ない怖さ」


出店前には不安がなかった店主さん。
しかし、実際に営業を始めてからは、商売の怖さを感じた瞬間もありました。



福岡で営業を始めてから、一番怖かったことは何ですか?



やっぱり、お客さんが来ないことですね。一度価格を上げた時に、その後一週間くらいお客さんが来なくなったことがあって。
あの時は、「やらかしたな」と思いました(笑)



一週間は怖いですね……。
「もう無理かもしれない」と思ったことはありますか?



それはないです。
全然(笑)



そこは即答なんですね(笑)
大変でも「辞めよう」にはならない。その辺りにも店主さんらしさを感じます。
一人で始めるはずだった福岡店
福岡店は、もともと店主さん一人で営業するつもりだったそうです。
しかし、実際にはたくさんの人に支えられてスタートしました。



最初は一人でやるつもりだったんですよ。でも今一緒に働いてくれているスタッフが最初から入ってくれて。



結局、一人じゃなかったんですね。



そうですね。本当に色んな人に助けてもらっています。
福岡で営業していると、大牟田とのつながりを改めて感じることも多いそうです。



福岡のお店に大牟田の人が来てくれると、やっぱり嬉しいですね。
「僕も大牟田です」とか、「奥さんが大牟田です」とか。大牟田の友達が、わざわざ福岡まで食べに来てくれることもあります。



商売を始めて改めて感じたんですけど、商売って義理人情なんだなと思いました。
プライベートの友人がお客さんとして来てくれたりしますし、そういう人たちに本当に支えてもらっています。



「商売は義理人情」。
今回のお話の中でも、かなり印象に残る言葉ですね。
「大牟田を背負っているつもりはない」
福岡への出店後、大牟田では
「福岡に出してすごいね」
「よう頑張っとる」
と声をかけられることも増えたそうです。
中には、「大牟田を背負って頑張ってくれ」と言う人もいるのだとか。



そんなことを言われると、プレッシャーじゃないですか?



いやいや(笑)
僕自身は、大牟田を背負っているつもりはないんですよ。勝手にやっているだけなので(笑)



その感じが店主さんらしいですね(笑)
でも「勝手にやっている」ことが結果として大牟田のPRにつながったら、それが一番自然なのかもしれませんね。
また買いに来てもらえることが、一番嬉しい



飲食店をやっていて、一番嬉しいのはどんな時ですか?



やっぱり、またすぐ買いに来てくれることですね。
「美味しかった」と言ってもらえるのも嬉しいですけど、その人が本当にまた来てくれると、「本当に気に入ってくれたんだな」と思えます。
週に3回くらい来てくれる方もいますよ。



週3回!
もう完全に生活の中にイカタルが入っていますね(笑)



そういうお客さんと話すのも楽しいですね。
目標は、イカタルを全国へ
最後に聞いたのは、これからのタル助について。
店主さんが見ているのは、天神のさらに先でした。



これからタル助をどうしていきたいですか?



まずは、もっとイカタルを知ってもらいたいですね。「イカタルってこういう食べ物なんだ」と認知してもらう。
その上で店舗も増やしていきたいです。東京や大阪にも出してみたい。そして最終的には、本当に全国に広げたいですね。



最初に話していた、「イカタルを豚骨ラーメンくらい全国へ」ですね。



そうです。
ただ、今の自分たちはまだそこまでの実力はないと思っています。まずは福岡でしっかりやることですね。
全国という大きな目標を口にしながら、「今はまだそこまでの実力はない」とも話す店主さん。
勢いだけで突っ走るのではなく、まず目の前の福岡でイカタルを知ってもらう。
その積み重ねの先に、東京や大阪、そして全国を見据えています。
「タルタルに溺れてみませんか?」


コロナ禍に、ビルの下へテントを出して始まったイカタル弁当。
そこから口コミで広がり、店舗になり、ついには大牟田を飛び出して福岡市・天神へ。
今回お話を聞いて特に印象的だったのは、店主さんが決して、「自分が大牟田を背負うんだ」と力んでいないことでした。
本人は、「勝手にやっているだけ」と笑います。
それでも、イカタルを全国に広めたい。
そして、その先で「イカタルって大牟田なんだ」と知ってもらいたい。
その思いは本気です。
そして、その挑戦を支えているのは、一緒に働くスタッフや友人、大牟田から訪れる人、そして天神で何度も買いに来てくれるお客さんたち。
店主さんの言った、
「商売は義理人情」
という言葉が、タル助というお店をよく表しているように感じました。



最後に、福岡でまだイカタルを食べたことがない方へ一言お願いします!



そうですね……。
「タルタルに溺れてみませんか?」(笑)



最後までタルタルたっぷりですね(笑)
富山さん、今日はありがとうございました!



ありがとうございました!
実際に食べてみたよ














